職員の負担軽減や業務改善、
そしてその先へ

広島県府中市
介護医療院みのり様

Q1

実施している介護サービスを教えてください

介護医療院みのりは、クリニック・デイケア・居宅介護事業所を併設しており、長期にわたり医療と介護の両方を必要とする高齢者の方に、療養上の管理・看護・医学的管理の下における介護及び機能訓練、その他必要な医療、並びに日常生活上の支援を一体的にご提供しています。

事業者情報
施設種別 介護医療院
法人名 社会医療法人社団 陽正会
施設名 介護医療院みのり
開設年度 2021年12月1日
所在地 広島県府中市元町43番地1
定員 82名(2023年9月現在)
併設施設 府中みのりクリニック、デイケアみのり、みのり居宅介護支援事業所
リンク 社会医療法人社団 陽正会 ローカルコモンズふちゅう

Q2

介護ロボットの導入のきっかけは何ですか?

2021年12月に、介護療養型老人保健施設から介護医療院に転換するにあたり、よりきめ細かいケアの提供とそこで働く職員の負担軽減を図るため、業務改善・人材育成の必要性を感じていました。

職員の負担軽減や業務改善・人材育成の必要性

そこで、2021年4月、業務改善・人材育成を図る担当を配置し、介護業務マニュアルの見直しと介護技術チェックシートの作成、目標管理・勤務評価制度を導入しました。

また、生産性向上のガイドラインを参考に、業務時間調査(タイムステディ)や職員アンケートを実施し、人材育成の仕組みづくりと業務課題の整理も行っていました。

その結果、現在の業務の流れは、入所者優先ではなく職員優先の流れであること、また、実際に働く職員の心情として、日々の業務に対し「常に忙しい、大変」「入所者と関わる時間がない」と感じていることが分かりました。

「常に忙しい、大変」「入所者と関わる時間がない」

それらを踏まえ、業務時間調査などの結果をもとに、日勤業務のタイムスケジュールの大幅な変更、業務分担の見直しを行い、業務の標準化(適正配置、役割明確化)を行った結果、長く働いている職員のなかには、業務改善へ抵抗感もあったが、以前より動きやすくなったという声も増えていきました。

そして、2021年12月、医療院転換時の施設改修に併せて、見守りセンサー(全室)と通知を受ける携帯端末、記録用タブレット、バイタル連携機器を導入し、夜勤業務の改善を行いました。

Q3

介護ロボットを導入した結果はいかがでしたか?

導入前は、不定期で行っていた巡視や、誤ってセンサーを踏んで鳴ってしまったことによる不必要な訪室があったが、導入後は、巡視回数は12回⇒7回で1時間15分短縮。記録時間は約1時間30分短縮。巡視と記録時間の短縮によって空いた時間で、今まで断続的にしかとれていなかった休憩が、2時間通しのまとまった休憩時間を確保することができるようになり、職員の夜勤業務に対する身体的・精神的な負担軽減に繋がりました。(間接業務に要する時間16%削減)

導入された介護ロボット
種類 見守り・コミュニケーション[施設]
導入機器 眠りSCAN (パラマウントベッド株式会社)、タブレット、バイタル機器
慣れるまでの期間 約6か月
慣れるまでの工夫

・スタッフのICTへの抵抗感を軽減するため、機器導入の目的と導入効果について、導入前・導入後も研修(全体・小グループ)を行い、日々の業務内で個別に操作説明を実施

・操作方法のマニュアル作成

導入効果について

定量的評価 導入前 導入後
①巡視方法 1回の訪室・巡回時間
・約10分×平均12回=約120分
センサー空振り=平均4回
1回の訪室・巡回時間
・約5分×平均7回=35分
PC画面でのモニター確認=0.5分
センサー空振り=0回
効果
約1時間15分の短縮
②深夜の休憩時間 規定では2時間だが、断続的な休憩が1~1.5時間程度だった
効果
2時間通しの休憩が確実にできるようになった
③記録時間の短縮 PC前にいる時間=約160分 記録時間=平均70分
効果
1時間30分の短縮

問題点・課題について

  • 業務改善には繋がったが、導入、改善取組の進め方として、トップダウンで行ったため,一定の効果がでたにも関わらず、現場職員が自分たちの取組結果として捉えられていませんでした。また、現場のリーダーは、今後自分たちでどのように改善活動を展開していったらよいのかわからないという状況、課題がのこりました。
これらを踏まえ・・・

商品選考から導入・運用・改善まで、現場職員による主体的な形で

改めて介護ロボットを導入

2022年より,職員アンケートで最も多く課題としてあがった「入浴業務」についての改善活動を行っています。

職員アンケートの結果「入浴業務」の改善を最も希望

2023年は、褥瘡予防を重点目標に、看護介護連携による業務改善を行うこととしています。入浴業務のなかでも、褥瘡や剥離などの皮膚トラブルの多い方や、拘縮のつよい方の「洗身介助」に時間がかかること、またこすり洗いや移乗によるケガへの不安が職員の負担となっていることから、新たに入浴介助装置(ピュアット)の導入を検討し、6月にデモ機を使用したシミュレーションを行い、7月に実導入しました。

導入にあたり、リーダーを中心に現場職員で、入浴業務のマニュアル・手順書を作成し、現在も日々の入浴業務で実践し、職員の気づきをとおして新たな工夫を加えながら改善活動を行っています。

導入された介護ロボット
種類 入浴支援[入浴支援]
導入機器 ピュアット (株式会社金星)

年度末にかけて、入浴業務の効率化と皮膚トラブル軽減についての効果検証を行っていく計画としています。

今年度の取組を通して、定量効果を得ることはもちろん、職員のやりがいや改善活動への意欲をさらに実感できる活動にしていければと思っています。

Q4

今後の課題や目標はありますか?

今後も、職員一人一人が、自分たちの業務の課題を自分事として捉え、目の前の課題に対して小さく改善活動を継続し、その過程で新たな介護ロボット導入についても積極的に検討していきたいと思います。

また、褥瘡予防以外でも、転倒予防、感染予防、身体拘束適正化などの施設内リスクに対しても、業務改善や介護ロボットの活用を推進していきたいと思います。

主体性の醸成と、課題や喜びを共有できる環境づくり

Q5

介護ロボットの導入を迷っている事業所にアドバイスをお願いします

  • これまでの取組をとおして感じるのは、介護ロボット導入を検討するにあたり、経営層・ミドルが導入したらいいなと思う機器と、現場職員が導入したらいいなと思う機器には差があることに気づきました。
  • 業務改善には、職員ひとりひとりが「自分たちの課題を自分ごととして捉えること」が必要。実際に日々機器を使って仕事をする職員の意見や要望を聞きながら、現場の課題に向き合う職場環境づくりが重要なポイントだと実感しています。
  • 導入はしたがうまく活用できない、思ったほど成果や効果がでないといった状況が起こらないよう、いきなり機器導入ではなく、既存の業務内容や手順を整理し課題を見える化し、その課題を解決するために必要な機器を選定していくことが重要だと思います。
  • 介護ロボット導入への抵抗や反対意見がでることもあるが、事業所の目指すビジョンを繰り返し伝えていくことは必要。一度に大きな改善を目指すのではなく、小さな改善を積み重ねることが大きな改善に繋がるため、失敗を恐れず行動に移してほしいです。
  • そして、職員の声や心情を聴きながら、経営層・ミドル・現場職員みんなで現場の課題と向き合い、前向きな対話を行う環境づくりが大切だと思います。